「香港 - 日本人の特徴」を書いていて思い出した事がある。内容は同じだ。同じ物なら2つも書く必要がない。でも思い出したので書きたい。葛藤で渦巻く頭の中、不意に1つの妥協案が出る。「文体を変えればいい」。
そんな訳で私が私にインタビューするような「お前、頭大丈夫か?」的展開で「[番外編] 日本人の特徴」を書こうと思う。なお、この文章は「香港 - 日本人の特徴」を読んでから続きとして読む事をお勧めする。
その飛行機は米国の国内線だったと言う。日本行きの便に乗り継ぎしやすい時間だった為、待合室には何人もの日本人を見かける事ができた。旅はここで終わりだ。ニューヨークからデトロイトに向かうのである。楽しすぎた思い出を少しずつ「本当に終わった事」なんだと認識していく。
「面白かったからまた行こう。」などという和やかな感情ではない。ニューヨークへの強い執着とそれでも感じる諦めが空港内で1人立ち尽くすナギラ氏の上に巨大な物として乗っかっていた。
「飛行機のトイレが嫌いなんですよ。」
重苦しい空気の中、先に口を開いたのは彼女だった。
+++ それでトイレに行ったんですね?
「はい。『飛行機の前はトイレ』、これが私の鉄則ですので。飛行機のトイレには2種類あるんですよ。1つは普通のトイレ。もう1つは“ポンッ”とやたらと大きな音を出すトイレ。この音付きトイレがダメなんです。それと同様にタンクが上に付いているトイレもダメです。公衆便所に入った時は、まずタンクの位置を確認し、それが上にある場合は流す前に鍵を開けてスムーズに出られるようにします。」
+++ つまり「内容や小細工よりも『驚かすタイプのお化け屋敷』」が苦手なタイプだと…。
「そういう事です。『来るで来るで』と分かっていても必ず驚くんです。」
彼女はそう言うとグッと目を瞑った。今までにあった怖い状況を思い出しているのだろう。
「驚かしテク」に引っ掛かってしまう人と「乗り物酔い」がひどい人とは共通の感覚がある。暗示と精神的ストレスだ。つまり対象物に対する恐怖が常に同じ状況を作り上げるのである。(この文章は適当な事を言っているので、信じないよう気を付けて欲しい。)
しばらくして瞼を開いた彼女は恐怖を克服したかのように晴れ晴れとした笑顔を見せた。
+++ 話は戻りますが、そのトイレは混んでいたのですか?
「はい。トイレは全て使用中になっていたので、待たなくてはなりませんでした。」
+++ 待ってる間は何を考えていたのですか?
「早く終われ、と。」
+++ なるほど、もっともな意見ですね。で、その待っている間に事件が起きた訳なんですね?その辺りを詳しく教えて頂けませんか?
「はい。・・・それはトイレ待ちをしてスグの事でした。
私が順番通り待っていると後ろからガヤガヤ喋りながら日本人のおばさん達がやって来ました。同じように乗り物に乗る前にはトイレを済ませておこうという考えの持ち主だったのでしょう。しかし『並んでまで個室に入る事はないわ。』という考えも持ち備えていたようです。
おばさん達は『あらやだわ、並んでるのかしら?』などと見れば分かるような事を話しながら私の後ろに並びました。そして私に言ったんです。
『待ってるの?』と。」
+++ よくある話ですね。
「背後から尋ねられたので『私に話しかけている』と確信が持てなかったんです。そこで私は返事をする前に後ろを向き、相手を確認しました。
おばさんと目と目が合いました。やはり先ほどの問いかけは私に対してなんだと確信しました。そこで早速返事をしようとしたその時、おばさんは少しうろたえながら言ったんです。」
+++ なんと?
「『ウェ、Wait?』。」
+++ どもりながら?
「どもりながら。」
+++ ナギラさんはその後どうしたんですか?
「困りました。私がそこで『あ、はい、待ってます』などと言ってしまうと、おばさんは思いっきり恥をかくでしょう。とは言っても、『イエ〜スッ』なんて、日本人の私が日本人に対して言えますか?言えませんよね?」
+++ 言えないですね。
「しょうがないので軽くうなずきはしましたが、イメージとしては『中国語しか分からない中国人』でした。そうです。自ら進んで中国人になりすましたのです。」
ナギラ氏はそこまで話すとたまらず涙を流し始めた。今まで押し殺していた辛さが破裂したかのように。
その後、おばさん達は逃げるようにトイレを出ていったそうである。ナギラ氏はその様子を眺めながら、ひたすらこう思っていた。
顔を見てから言うなよっ(怒)。
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